今、女性がキャリア官僚になる絶好のチャンス

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 キャリア官僚。それは公務員の中でも最上位の中央官庁が立ち並ぶ霞ヶ関で働くエリート。我が国の舵取りを担う重要なポジションであり、ザックリ言うと我が国の政策を考えるお仕事。その政策や目に余る行動ゆえに、度々メディアに叩かれるが間違いなくこの国になくてはならない存在。自分の仕事の規模が時には何十、何百億円も動かすほどの規模であるため、やりがいとしては十二分にある。

 例えばドラマで言うと、「踊る大走査」警察庁の室井管理官(最終的には警視長:階級的にも 警視総監の次に偉い役職)とか、「相棒14」反町隆史演じる冠城亘なんかがそうだ。かつて採用者に占めた東京大学をはじめとする旧帝国大学およびその大学院生ばかりだった官僚も、ここ最近ではなんと採用者に私大が二割もいる。昨今では、学歴あらずともキャリア官僚になりやすい時代が来た。

...女性にとっては特にそういえそうだ。

 

キャリア官僚にどうやったらなれるのか

 キャリア官僚は国家公務員総合職の俗称である。国家公務員には一般職と総合職に分かれ、後者が主に国の施策を司っている。国家公務員総合職職員になるためには、公務員試験を受けなければならない。この試験は国家公務員総合職試験と呼ばれ、少し前まで国家公務員一種試験(通称、と呼ばれていたものだ。毎年~人合格しましたとニュースでも取りあげられるのを見たことがあるだろうか。
官僚になるプロセスはそう民間と変わらず、少しだけ筆記試験が重視されているくらいだ。筆記試験に受かってから面接受けて内定貰うというスタイルなのだ。

人事院試験(筆記・面接) → 官庁訪問(面接) → 内々定

こんなプロセスで、人事院試験の最終合格した者だけが、官庁訪問各省庁に面接に行くこと)をする権利が得られる(合格から2年間有効)
今回の主題は官庁訪問なので、人事院試験と官庁訪問の詳細については別記事にまとめた。

国家公務員総合職試験の流れ - レベルF

 

なぜ女性にとってチャンスなのか

 先日、安倍首相は女性活躍推進政策の一環として「女性の管理職を3割にする!」という政策を掲げたのだ。他の先進国と比較して明らかに日本の女性の管理職が少ないためだ。政府主体の改革に、政府のお膝元である国家公務員の人事は民間に先駆けてモデルケースとならねばならない。人事らには「女性登用3割」というノルマが課された。

菅義偉官房長官は11月29日、中央省庁の2015年度の国家公務員採用について、全体、総合職ともに女性の割合を30%以上に引き上げる方針を決めた。「女性の活用」を成長戦略に掲げる安倍政権の姿勢を明確にし、民間にも積極的な女性の採用や登用を促すのが狙いだという。NHKニュースなどが報じた。

国家公務員、女性の採用を30%に 安倍首相が目指すウーマノミクスとは?

当然各省庁の人事は必死になる。とりわけ女性受験者数が少ない分野なんてもっての外だ。とある人事は「最終合格してさえしていれば女性なら誰でも採る」と言ったそうだが彼らにとってそのレベルの問題のようだ。

 

実際の採用数を見てみよう。人事院の公務員白書によると国家公務員総合職試験(大卒・院卒混合の全区分)における内定者における女性の割合は以下のようになっている。

(データ参照元人事院公務員白書より国家公務員Ⅰ種試験H1~H23年度、国家公務員総合職試験H24~H26の情報)

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めちゃくちゃ上がっている。特にH25→H26では一気に10パーセントも上昇している。先に述べたウーマノミクスの通り、きちんと女性の割合が30%を上回っている。

せっかくなので試験倍率もみてみよう。(青線は男性オレンジ線は女性

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人事院試験倍率=申込数/最終合格者数、官庁訪問倍率=最終合格者数/採用者数)

 申し込み数は試験を実際に受けていない人数が含まれるため実倍率はもう少し低く、逆に官庁訪問の倍率は、合格者名簿*1に載っている人数は実際にもう少し多いため倍率は少し小さめの値で示されている。

  この結果を見てみると、筆記試験では女性は劣勢だが、官庁訪問でははるかに女性の方が入りやすいことがわかる。女性の方が男性よりコミュニケーション能力に優れていて人事の心を鷲掴みしたのかどうかはわからない。

 女性は筆記試験は少し苦手だが面接で挽回。男性は筆記の点数こそ高いものの面接が苦手で採用に至らない。と考えるべきなのだろうが、先のウーマミクスから考えると、女性のボーダーが幾分と低くなっていると考えるべきであろう。現に、女性の少ない工学区分では、女性の官庁訪問H26)の倍率は1.5と低い。

つまり、女性は筆記試験さえ受かってしまえばそこまで落ちる心配をしなくていいということだ。

 

女性受験者の絶対数を見てみる

女性のキャリア志向が強まって受験者の絶対数が増えたのだろうか?絶対数を見てみよう。

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青線が申込者数で、オレンジ線が採用された人数だ。

 これを見てもらえばわかるように、H8年がピークの申込者数は、H16年以降比較的に落ち着いている。むしろここ最近の国家一種試験から総合職試験に移行した後(H24~)はやや減少傾向にある。

 申込者は減少傾向にあるにも関わらず採用者数は右肩上がりであったH24とH26を比較すると女性は倍以上の採用があったわけだ。

 つまりかつてないほどに女性の登用が増え、すくなくとも安倍政権下では今後採用者数は横ばいもしくは増加することが見込まれる。今こそまさに女性がキャリア官僚を目指すには絶好のチャンスであるといえよう。

 

 

オマケ

国家公務員総合職試験の申し込みから採用までの通算倍率を男女別にみてみた。

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 そもそもキャリア官僚を目指そうという人が少ないことから考えても採用に至るまでの倍率が総じて高い試験だということが分かる。男女平等社会とはいえ過去の試験データを見ると男性の倍率の変動幅が少ないのに対し、女性の倍率の変動幅は非常に大きい。(バラつきの指標・標準偏差でみても実に3倍の差)

 しかしここ5、6年は男女間の倍率差比較的小さくなり、政府主導で男女平等を目指そうという動きが見て取れる。そしてH26年度ではじめて男女の通算倍率が逆転するという結果に至り、H26年度は転換期だといえそうだ。前年度H27年度試験の結果はまだでていないが、H26と同様に女性登用三割を目指したものになるだろう。

*1:合格者名簿:その年度の試験合格者だけでなく、過去2年以内の合格者が掲載され、 合格者名簿に記載されていれば官庁訪問できることとなっている